南米で「チノ」と呼ばれる日本人──歴史的背景と現代の実情

南米を旅したり、暮らしたりすると、多くの日本人が「チノ(Chino)」と呼ばれる経験をするでしょう。スペイン語で「チノ」は本来「中国人」を指しますが、南米では東アジア系の人々全般に対して使われることが一般的です。日本人、韓国人、台湾人、そして中国人の区別がつかないため、親しみを込めて「チノ」と呼ぶのです。しかし、この「チノ」と呼ばれる文化の背景には、南米における日本人移民の歴史が深く関わっています。

本記事では、南米における日本人移民の歴史と現代の実情、そして「チノ」という呼び名の由来と意味について詳しく解説します。


目次

1. 日本人移民の歴史──南米に渡った先人たち

1.1 日本人移民の始まり

日本人が南米に移住し始めたのは19世紀末から20世紀初頭にかけてのことです。特にペルーとブラジルは、日本人移民が多く渡った国として知られています。

最初の日本人移民は1899年、790人の契約労働者がペルーに渡ったのが始まりです。彼らはサトウキビ農園綿花農園で働き、過酷な労働環境に耐えながら生活していました。同じ時期に、ブラジルにも多くの日本人が移住しました。1908年には移民船「笠戸丸(かさとまる)」がブラジルに到着し、日本人移民の歴史が始まったのです。

その後、日本人移民は商業や農業で成功し、ペルーやブラジルの経済に貢献しました。現在では、南米全体で約200万人の日系人が暮らしているとされています。


2. なぜ日本人は「チノ」と呼ばれるのか?

2.1 「チノ」という言葉の由来

スペイン語圏では、中国人を指す「Chino(チノ)」という言葉が広く使われています。しかし、南米では中国人だけでなく、日本人や韓国人など、東アジア系の人全般を「チノ」と呼ぶ文化があります。これは、歴史的な経緯と南米の人々の文化的な感覚が関係しています。

  • 歴史的要因
    日本人移民が最初に南米へ渡った頃、多くの人々は東アジアの国々について詳しく知らず、日本人や中国人、韓国人の見分けがつきませんでした。そのため、東アジア出身者をまとめて「チノ」と呼ぶようになりました。
  • 言語的要因
    スペイン語では、「チノ」は単に「中国人」ではなく、「アジア人」全般を指す口語表現として使われることがあります。例えば、ラテンアメリカでは「チノの店(Tienda de Chinos)」というと、東アジア系の人々が経営するコンビニや雑貨店を指すことが多いです。

3. 「チノ」と呼ばれることに対する日本人の反応

南米で「チノ」と呼ばれることについて、日本人の反応はさまざまです。

3.1 ポジティブな意見

  • 親しみを感じる
    「チノ」という呼び名には悪意はなく、むしろ親しみを込めたニュアンスが強いです。そのため、「地元の人とすぐに打ち解けられる」と感じる人もいます。
  • 日系社会の存在感を感じる
    南米には多くの日系人がいるため、「チノ」と呼ばれることを通じて、日本人移民の歴史や影響力を実感する人もいます。

3.2 ネガティブな意見

  • 正しい国籍で呼ばれたい
    「自分は日本人なのに、なぜ中国人として扱われるのか?」と違和感を覚える人も少なくありません。特に、歴史的な背景や文化の違いを理解してほしいと感じる人もいます。
  • ステレオタイプを感じる
    「アジア人=チノ」という単純化された見方に、不快感を覚える人もいます。特に、アジア人を一括りにすることで、個々の文化的背景が尊重されていないと感じることもあります。

4. 南米で日本人として生きる──現代の実情

現在、南米には200万人以上の日系人が住んでおり、政治や経済、文化の面で大きな影響を与えています。特にペルーでは、日系人のアルベルト・フジモリ氏が大統領(1990~2000年)を務めたことでも知られています。

また、南米各国には**「日本祭り」や「桜祭り」**といったイベントが開催されることも多く、日本文化への関心が高まっています。日本食レストランも増え、寿司やラーメンは南米でも人気のある料理となっています。
日本でも馴染み深いチャーハンも人気ですね!


5. まとめ──「チノ」と呼ばれることをどう受け止めるべきか?

南米で「チノ」と呼ばれるのは、歴史的な背景と文化的な慣習によるものです。決して差別的な意味合いではなく、むしろ親しみを込めた表現として使われることが多いです。

もちろん、「日本人」として正しく認識されたいという気持ちも理解できます。しかし、南米では「チノ」が日常的に使われる文化が根付いているため、無理に訂正しようとせず、現地の人々との交流を楽しむのがよいでしょう。

南米を訪れる日本人としては、この文化を理解しながら、現地の人々と良い関係を築くことが大切です。「チノ」と呼ばれたときは、笑顔で「Soy japonés(私は日本人です)(ソイ ハポネス)」と返してみるのも良いでしょう!

協力隊で1年半ペルーで暮らしていて「チノ」と呼ばれなかった日があったかな?

コメント

コメント一覧 (2件)

  • 中国人は、日本人より早い時期に入植してたのですか? 
    チノと呼ばれるようになった背景を知りたいです。

    チノパンって知ってますか? コットンパンツのことですが、中国なんですかね?

    • コメントありがとうございます。
      ペルーの話にはなってしまうのですが、ペルーでは中国人を19世紀半ば(1949年ごろ)から労働者として受け入れたようです。
      なので歴史としては日本人より半世紀ほど早いですね。そのため、日本人より中国人の方が浸透したのかもしれませんね。
      チノパンについては米西戦争(1898年)でフィリピンに派遣されたアメリカ軍が履いていたズボンの生地は、中国で生産されたコットンを使用していました。
      そのため、スペイン語圏ではこのズボンを「中国の布(pantalones de tela china)」としてchino(チノ)」と呼ぶようになったという説があるようです。また、米西戦争でアメリカ軍がスペイン領フィリピン(当時スペイン統治下)に上陸した際、スペイン兵がアメリカ兵のズボンを見て「チノ(中国製)」と呼んだという説もあります。

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